人生の大根役者の死
オロチの部下に過ぎなかったカン十郎、そして遂に錦えもんによって斬り殺されたと思うのですが、やはり本当に死んだのでしょうか。
今回はカン十郎、完全な死亡と考えて考察していきます。
カン十郎という役者人生
カン十郎は何かの役を演じることで生き延びてきました。
しかし、本来であれば、自分が望んで訳ではない生き方でした。
カン十郎は黒炭という苗字を持ったが故に、国中の黒炭姓を目の敵にされて、両親を目の前で殺され、精神を殺されてしまったのです。
オロチがその殺した殺人者を逆に殺した結果、カン十郎はオロチに感謝の意を述べ、光月家の間者として人生を歩もうとします。
本来のカン十郎は正に両親を殺された黒炭カン十郎であり、その本性はあくまで復讐者でした。
しかし、カン十郎は本当にこれで良かったのでしょうか。その胸中を推しはかっていきましょう。
確かにカン十郎としてではなく、赤鞘九人男として楽しんでいた
まず、間違いなくカン十郎は光月家の家臣として、楽しんでいたのは間違いないでしょう。
本来であれば、憎い筈の光月家の家臣になることが二十年間出来たのも、偏にカン十郎が精神を殺された事で却って、もう失うものが心の底から無かったからでしょう。
これがもし、カン十郎の両親が生きていれば、良心の呵責に耐え切れず、自白していたかもしれません。
ところが、既に両親を目の前で殺された以上、カン十郎はこの世に全く未練がありませんでした。
仮にオロチが殺していなかったら、カン十郎は自殺を選んでいたと思います。
そう考えると、カイドウ以外にも自殺を試みる部下がいたという事になりますが、カン十郎が自殺を思いとどまったのは、偏にオロチのおかげだったといえます。
オロチはいうなれば、同じ黒炭姓で命を狙われた境遇といえます。
このカン十郎とオロチの絡みはそこまで無かったのですが、オロチはカン十郎に対して、信頼できる部下がいると言ったのは、自分と同じ命を狙われた同族意識があったのかもしれません。
オロチも下手を打てば、既に殺されてこの世にいなかったのですから、いうなれば黒炭姓は既に絶滅に近い状態だったといえるでしょう。
そして、そんなオロチから提案された光月家の家臣になるという事は、復讐を差し引いても、汚れ役ではない主君の為に戦う役であり、カン十郎としては復讐を差し引いても、素晴らしい役だったといえます。
人生の大半を役に徹していた男
カン十郎は公安のスパイがヤクザに扮したり、進撃の巨人のライナーが壁の中の兵士になるように、自分がなりたいと心の底から望んだわけではない立ち位置に立った男といえます。
故にカン十郎は錦えもんに殺されようとした時、カン十郎なりに大団円だったのかもしれません。
黒炭オロチのスパイであった自分が、許されず斬り殺される。それはカン十郎からすれば劇的な死であり、ノコノコ生き延びるよりも非常に印象深い死にざまだったといえます。
自分の死にざまですら、楽しいと心の底からカン十郎は思っていたかもしれません。